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第28章 ヤキモチの答え M×A









そのあとも、普通に接する


…何てことが出来るほど、
俺は大人じゃなくて。

雅紀のことに関しては、
余裕なんてある訳なくて。


そんな俺の余裕のなさを悟ったのか、
ニノもあまり喋らなくなって。


ずっと微妙な空気が流れてた。


そんな空気に耐えられないって感じで、
ニノがソワソワしてて。



「…そろそろ帰ろっか。」
「ん…。」


俺のほうから切り出して、
店を出た。


タクシーを店前で呼んで、
1台のタクシーが止まった。


俺がぱっと乗り込んでも、
ニノが来る気配がなくて。


「乗って帰らないの?」
「ん。

今日は家に帰んないから。」


家に帰んないって…。

ニノと翔くんは、
結婚してから一緒に住んでる。

前のマンションは、
2人とも引き払ったって言ってたし。


「行くあて、あるの?」
「それは大丈夫。
さっき連絡も取ったから。」


携帯をちらっと見せながら言う。

そういうとこ、しっかりしてんなぁ。


「じゃあ、お疲れ。」
「うん。明日…かな?」
「明日だね。おやすみ。」


少しずつ歩き出してるニノに
手を振って、タクシーは進む。




静かで、どこか重苦しい車内。


でもたぶんそれは、

運転手さんのせいじゃなくて、
曇ってる空のせいじゃなくて、

自分の気持ちの問題で。


雅紀の好きだった人…かぁ。


今俺のことを好きでいてくれてるから、
いいんだよな?って、思う。

思うんだけど…。


結局、自信がないんだ。

昔好きだった人にまで嫉妬して。


相手が翔くんなら、尚更で。

今日の、あの距離で笑いあってた
2人が何度も頭に浮かぶ。


…もしかして。


雅紀に限って、
それはないはずだ。


雅紀からの愛は、
毎日ちゃんと感じてるし。


じゃあ何でこんなに
胸騒ぎがするんだろ。

何でこんなに心が荒れてるんだろ。



家に帰るのが、
ほんの少しだけ怖い。

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