
DAYS
第28章 ヤキモチの答え M×A
あ、と思った時にはもう遅くて。
床に雫が落ちていった。
「潤だけなのに…。」
「でもー…」
じゃあ、あの会話は何だったの?
それを聞く前に、
「でもじゃない!!!」
今まで聞いたことがない、
雅紀の悲痛な声。
今まで見たことがないほど、
取り乱してる雅紀。
だけど、この時の俺はバカで。
雅紀がそれだけ傷ついてるってのにも
気が付こうともせずに、
また雅紀を責め立てる言葉しか
出てこなかった。
「だって、
上手くいったって…。
そういうことなんじゃないの?」
「違う、それはー…」
「もういい!」
何か話そうとする雅紀を遮った。
怖かった。
違うと分かっていても、
もし…。
もし、そうだと肯定されたら。
俺じゃなくて、
翔くんと…ってなっていたら。
ホントバカだよな、俺。
翔くんだって、ずっと
「和、和」言っててふらつく訳ないのに。
雅紀だって…。
「…もういいんだ。そうだね。
話も聞いてくれないんだね。
もう…俺のことなんて嫌い?
…翔ちゃんのことを好きだった
俺なんて嫌い?」
「違う、嫌いなんかじゃー…」
「でも信じてくれないじゃん!!
…嫌いって言われるより、
ずっとずっと、辛いよ…。」
そう言うと、財布と車のキーと
携帯をカバンに突っ込んでいく雅紀。
「雅紀?
どこ行くの?」
「…。」
「なぁ。」
「俺のことなんて見たくないでしょ。
出ていった方が嬉しいんじゃないの?
潤だって。」
皮肉っぽい口調の雅紀。
同じだ。
俺の言った言葉と。
追いかけることも出来ずに、
その場に立ち尽くして。
部屋の鍵も持たずに飛出した雅紀。
…本当に帰ってくる気、ないの?
今さらそんなことを思ったって、
後の祭りで。
玄関の閉まる音だけが、
やたらと大きく響いた。
