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DAYS

第30章 時計じかけのアンブレラ II S×A








翔さんの言葉に、
傷つきも悲しくもならなかった。

バレたかとは思ったけど。

だって、たっぷりの皮肉を込めて
言ったから。


だけどこうやって出てきたのには
理由がある。

こうすれば、翔さんは必ず
考え込む。翔さんが傷つく。


ぐるぐる考えてよ。

そうやってぐるぐる考えて。


相葉さんの事なんて考えないで。

俺のことだけ考えて。


アイツから離れろよ。



手ぶらで帰れば、
ホントに泣いてたみたいになるから
コーヒーを買うことにした。

冷たいコーヒー。


まだ少し寒い時期だけど、
これくらいが丁度いい。



手の冷えるコーヒーを持って、
翔さんのところへ戻ってみれば

やっぱり…。

病院に来た時より、
何倍も落ち込んでる翔さんの姿。


…くくっ。



出来るだけ、
優しく。明るく。少しおちゃらけて。


「翔さん。」
「え…。ニノ?」
「何でそんなに驚いた顔してるんですか。」


努めて明るく。

無理して笑った翔さんの顔。


やっぱり。

翔さんは優しいからね。

胸が痛いんでしょ?
俺の笑顔を見るとさ。



そんなことを考えてるのに。

ドロドロで醜い心を持った俺なのに。


「ニノ、ありがと…。

…あと、ごめん。」


真っ直ぐに俺のほうを見て言う。

そんな翔さんの瞳が、
アイツの真っ直ぐと重なって。


胸がズキンとした。


「大丈夫です。

…俺は、そんなに感謝されるような
人間じゃないですから。」
「何それ。」


無理やり取ってつけた笑顔を貼り付ける。


泣きたくなった。

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