
DAYS
第33章 交接 -deep night- ANOS×M
「ご飯、食べてないでしょ?」
「うん。だって、絶対作ってくれてるって
思ってたから。違った?」
「作ってたよ。翔くんの好きなオムライス。」
まだ少し掛かるから、と言って
翔くんにはリビングで待ってもらう。
「ビール呑む?」
「あとで一緒に乾杯するまで待つよ。」
「そっか。じゃあ、急いで作るね。」
「いつもありがとな。」
まるで恋人のような会話。
傍から見れば、の話だけど。
俺たちはそんな関係じゃない。
もちろん大野さんとだって。
…あとの2人とだって、ね?
俺が本当に求めてるものは、
それじゃないから。
だけど…。だけど、もう少しで
手に入りそう。
「…ふふ。」
つい笑みが溢れてしまう。
ご飯を作る手の速度も速くなっていく。
と、そんなところに
「潤、今日はご機嫌じゃない?」
何かいいことでもあったの?
なんて、翔くんがひょっこりやってきた。
いいことなんてない。
これから、いいことがあるんだよ。
なんて言える訳ない。
ここで言ってしまえば、
すべが水の泡になってしまう。
何年もかけて築き上げてきた
この関係性のすべてが。
「何にもないよ。
翔くんと2人で会うのって、
久しぶりだから…ね?」
料理をする手を少し止めて、
ちらっと翔くんのほうを覗く。
すると、やっぱり顔が
ニヤけてる翔くん。
これ、好きだよね、翔くん。
何年たったって変わらない、
翔くんが好きな俺のクセ。
そんなことが簡単に分かってしまう
自分がおかしかった。
