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DAYS

第34章 Lives M×O




すぐに分かった。

動いてる音じゃないって。
話してる音でもないって。

『泣いてる』んだって。


「…っ、ふっ。」


押し殺すように泣く声が、
ドア越しに聞こえてくる。

苦しそうに、時々大きな息をしてる。


入りたいけれど、入れない。
俺のせいでこうなってるんだ。

俺が入ったら、智は泣けない。
今よりずっと苦しくなる。


ドア1枚がこんなにも重たい。
ドアの向こうには智がいるのに。

ひとりで泣いてる智が…。


「何やってんだよ、俺…。」


ひとりで泣かせたくなくて、
始めたシャアハウス。

今や、恋人同士の同棲にまでなった。


もうひとりで泣かせないって誓った
ドアの前で、また俺は座り込んだ。


何泣かせてんだよ、俺。

こんなことがしたくて同棲したんじゃない。


本当は
「どうした?」って聞きたい。

でも明らかに俺のことで泣いてる、と思う。

朝からいつもとどこか違ってたのに。

楽屋で、少し強引にでも聞けばよかった。


やっぱり開けよう。
話を聞かなくちゃ。

思い切ってドアに手をかけて
手前に引いてみる、けど開かない。


「はぁ…。」

詰まっていた息を吐き出した。

ドアの鍵は、俺への拒絶。


1度も鍵が掛けられていたことはなかった。
あの夜の日でさえ、1度も…。


泣き声は、いつしか寝息に変わった。


だけど、動く気にはなれなかった。

眠気もこなかった。

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