テキストサイズ

DAYS

第34章 Lives M×O




M side


唇に、何か柔らかい感触を覚えた。

ゆっくりと目を開くと、
そこには智の顔が見えた。


「え…。」
「あ…。」

驚いて開いた口が塞がらない俺と、
顔をきゅーっと赤くする智。

廊下にそんないい大人が2人。
しかも時間は深夜。


「え、今キスして…。」


思わず、触れられた唇を指でなぞった。

まさか2人のファーストキスで、
寝込みを襲われるとは思ってもなかった。


「あ、あの、ごめん…!」


智はオロオロして慌ててたけど、
最後には俯いて顔を隠してしまった。


「謝んないでよ、嬉しかったから。」
「そうじゃなくて…。

朝から態度悪くてごめん…。」


唇をきゅっと噛んで、泣きそうな目で
真っ直ぐに俺を見ながら話す智。

不覚にも可愛いと思った自分がいた。


「聞いちゃったんだ…。」
「何を?」
「潤が風呂場で呟いてたことを。」


呟いてた…。俺、何かまずいこと言ったっけ。
思い出せ、俺。


「あ…。」


ひとつ、心当たりがあった。
智が聞いたら誤解してしまいそうなこと。

確か俺、『追い出そうかな』みたいな
ニュアンスのことを言った。

それを聞いて、智があんな態度を
取ってたとしたら納得がいく。


「あ、あれは誤解だよ!」
「うん。分かってる。

だから、ちゃんと聞かせてほしい。」


俺の事を信じてくれてる。

それが何よりも嬉しくて、
胸がじーんと熱くなった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ