
DAYS
第34章 Lives M×O
M side
床に叩きつけたリングとは
別のリングを取り出して智は俺に
投げつけると、アトリエを出て行った。
「おい!智!」
呼び止めてはみるけど、部屋からは
一歩も出ない。
何だか悔しい。
「ほんっとに、何なんだよ…。」
夜な夜な何してるのかと思えば
ペアリングを作っていて。
誰かのことを想って、あんなに
幸せそうな顔をしてたんだ。
しかも否定しないし。
最終的には、投げつけてきやがった。
手に握ったままの、もう一つのリング。
もう体温で温められているはずなのに、
手のひらの中で冷たく感じる。
持ってるままなのも何だか悔しくて、
また投げつけようとした。
だけど、
『誰のために作ってたと思ってんだよ』
智が叫んだ声が、頭でこだまする。
それが妙に引っかかって、
見たくはないリングを、そろっと
手のひらの中から取り出した。
『J.M & S.O』
すぐに分かった。
俺のために作ってくれてたってこと。
その文字を見た瞬間に、
俺はゲストルームに走り出した。
バカだな、俺。
最低だ。
勝手に切れて、せっかく智が作った
リングを投げつけて。
あの幸せそうな顔も、夜な夜なの作業も
全部全部俺のためだったんだ。
ゲストルームのドアをノックしても
応答はない。
当たり前だよな。
また。また、すすり泣きの声が聞こえる。
俺たちの恋はいつだって、
何かこのドアに阻まれてる。
「バカだな、俺も。
出てきてよ、智…。」
