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第6章 三回目の愛図 M×O



M side


「好き。」

たった一言。
たった一言だけなんだけど、
一番欲しかった言葉が聞こえた。


今すぐ抱き締め返したい気持ちと、
こんなの嘘だって否定してる気持ちが
ずっと心の中で葛藤してて。

こんな酔っ払いの戯言なんて聞いてても
仕方がないって、どこかで思ってる。

だけど、信じたかった。
「好き。」
智さんは確かにそう言ったから。


「潤…。」

急に名前を呼ばれてドキッとする。

智さんの腕が背中から、腹のほうまで
ゆっくりと伸びてきて。


「…智さん?」

名前を呼んでも返事は無くて。
腕をそっと解いて後ろを向くと、
俺のほうを見上げてる綺麗な瞳と
ぶつかった。


そんなのに勝てるはずなんてなかった。

この時だけでもいいから、
智さんが俺の腕にいてくれるだけで。
それだけでよかった。


どちらともなく近づいて、
そっと唇が重なる。

触れるだけのキス。
そのキスでさえ、智さんは俺を虜に
していくんだ。


「潤。」
「…ん?」

目が、もっと欲しいと催促してる。

その瞳に、
その表情に、
魅せられて、煽られていく。


啄むようなキスは、次第に深く深く
なっていた。


「んんっ…ふっ…はぁ。」

漏れる吐息が色っぽさを増してきてる。



唇を離すと、こてっと智さんの体の
力が抜けて、俺の腕の中に沈み込んでる。

「智さん?」
「すぅー、んん。」


返事の代わりに聞こえてきたのは寝息。


え、寝たの!?
この状況で!?


肩を揺すっても、
鼻をつまんでも、
頬を引っ張っても起きる気配すらなくて。


「はぁーー…。」

思わずため息が出た。


スヤスヤと俺の腕で寝てる智さんを
見るとモヤモヤしてくる。


寝て、起きれば全部が夢に
なってるんじゃないか。
朝になれば居なくなってるんじゃないか。


好きと言われて返事も出来ないまま、
妙な関係のまま止まってる。



「もー…。絶対に酔っ払ってたじゃん。」


お酒の力と、普段の睡眠力もあって
深ーい眠りについてる智さんに、こんな
俺の独り言が届くわけもなくて。


気がつけば智さんの寝息に誘われて、
俺も目を閉じていた。

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