
DAYS
第35章 ホント S×O
機嫌がよくなった智くんと、
向かったのは都市部から1時間ほど
車を走らせたところ。
山の中。
それもかなり深い山の奥だ。
「ねぇ、翔くん?」
「ん?」
「まさかと思うんだけどさ…。
ここで降りるの?」
「何言ってんの、智くん。」
「あ、だよね、よかっー…」
「ここ以外にどこがあるんだよ。
ほら、降りて降りて。」
この場に及んで、まだ助手席で
渋っている智くんを無理やり引っ張り出した。
車を少し走らせただけで、
こんな所があるんだもんな…。
普段ビルの森に埋もれてる俺たちには、
味わえることのないこの開放感。
マイナスイオンとか分かんないけど、
たぶんこんな感じなんだと思う。
初めは、横浜かどこかその辺で
デートをしようと思っていた。
だけど俺たちの職業柄それは出来ない。
かと言って、デートはしたい。
行き着いた答えがココだった。
民宿のような、小さな宿が
森の中にひっそりと建っていた。
「ここに入るの?」
「そうだよ。半日だけだけど、
借りることが出来たから。」
昼食と、夕方まで部屋を借りることが
出来ないかと聞いてみれば、
女将さんは快く了承の返事をくださった。
「とりあえず荷物は置いてさ!
ここ、いっぱい遊べるから!」
「え、うわっ!ちょ、翔くんはしゃぎ
すぎだよ!」
今日は夏休みも開けた平日の午前。
まわりに誰もいなかった。
それが俺を大胆にさせてる。
こんなに堂々と手を繋ぐことが出来るって、
幸せだよな。
