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DAYS

第36章 Mine S×A





翔ちゃんはダメって言った後、

「あ…。」

そう小さく呟いて、悲しい顔で
俺の方を見た。

だけど、何も言わない。

「行っていいよ」って言葉も。
「行かないで」って言葉も。何も。


「行っちゃダメ…?」

もう一度控えめに聞いてみる。
声を抑えて、そーっと。


「…そんなに行きたいなら行けば?」

さっきよりも素っ気ない態度を
取られた。

子供が拗ねてる…というよりは、
やっぱり苦しそうで。
何かを悩んでいる顔をしてたから、

「ううん。行かない。
断っておくね。」

温めた料理を片手にリビングへ向かいながら、
そう答えておいた。


翔ちゃんは驚いた顔をしてる。


「何でそんな顔してるの?」
「いや、だって…。行かないって言うから。」
「だって行ってほしくないんでしょ?」


また、悲しい顔をする。
もうどうしろってんだよ。

俺だって、あんな風に言われちゃ
信頼されてないのかなって不安にもなるし、
無理にでも行きたくなる。


でも、そんな顔されちゃ…無理だよ。

何も言わないで、そっと翔ちゃんを
抱きしめる。


「…ねぇ、何かあった?」


もう一度、あの質問をしてみる。

だけれどやっぱり答えは、

「何でもないよ。」

それだけで。


パッと体を離されたかと思うと、

「ご飯食べたい!
いっただきまーす。」


さっきとは何トーンも明るい声を出す
翔ちゃんに、俺はとうとう何も言えなかった。

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