
DAYS
第36章 Mine S×A
いくら発進直後だとは言っても、
動きかけた車から勢いよく飛だしたんだから
手のひらと脛と肘を擦りむいてる。
お気に入りのパンツが破れたな…とか、
今はそんなのどうでもいい。
幸いこの時間で人は多くはなかったけど、
やっぱり多少の人目はあって、怪訝そうな
顔で俺を見てる人がチラホラ。
バッグからとりあえずマスクだけを
取り出して、急いでつけると
タクシーを拾おうと手を挙げる。
タッキーが、少し離れたところで
車を止めているのが見える。
夜遅いとはいっても街中。
俺の名前を大声で呼んで止めることは
出来ないから、走って向かってきてる。
今引き留められたら、またきっと
上手く丸め込まれる。
俺はとにかく、翔ちゃんに会いたい。
幸運なことに、タクシーはすぐに捕まる。
乗った直後にタッキーが追いついてきて、
何かを俺に伝えようとしてる。
『諦めないから』
言われた言葉だって、悩みの種になるとは
思うけど、そんなの今は気にしない。
「翔ちゃん、ごめん…。」
擦りむいたところが痛い。
手のひらから血がつーっと垂れる
感覚があった。
だけど、翔ちゃんの方が
ずっとずっと苦しかったんだもんね。
今日の俺は、ついているのかな。
信号機にも一つも止まらないで、
翔ちゃんの家のマンションの下まで
やって来た。
