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♂×♀時々♂×♂

第1章 自己紹介的プロローグ

ピンポーン…


俺はインターホンに駆け寄ると
画面を確認する。


(…啓太だ…)


インターホンの通話ボタンを
押す事を躊躇って、
俺はダッシュで玄関へと向かった。

ゆっくりと扉を開ける。

少しはにかんだ啓太が
照れ臭そうに立っていた。


「…よっ。暑かっただろ?とりあえず入って。」


俺は自分のドキドキをかき消す様に
ワザと冷めた声でそう告げる。

それでも啓太は
嬉しそうに微笑んで中へと入って来た。

そんな啓太が…
いじらしくて、可愛くて、
さっきまで悩んでいた事なんて
全て吹き飛んでしまった。

リビングへと啓太を通すと、
啓太は辺りをキョロキョロと見回していた。


「…何?何か珍しいモンでもある?」


俺は啓太に冷たい麦茶を用意しながら、
そう問いかけた。


「…嫌…夏瀬くんが…住んでるんだ…って。その景色見れて…何か嬉しくて。ごめん…気持ち悪い事言って。」


と啓太は顔を伏せた。

カラン…
とグラスの氷が溶けて
ガラスにぶつかる音がした。

それと同時に
俺の中でも何かが崩れた。

昨日の様に…
何か俺の中の野獣が
目覚めてしまう…

そんな感覚だった。


「…とりあえず座れば?」


俺は平然を装うと、
グラスを片手に啓太の方へと向かう。


「…ありがと。じゃぁ…」


と啓太は俺と目を合わさずに
ソファーへと腰を下ろした。


「…海斗…でいい。夏瀬くんなんて…何か余計くすぐったいよ。」


俺はそう言いながら、
啓太の前にグラスを置く。


「…か…か…海斗。……海斗。フフン…何か…照れくさいね?けど…嬉しい。」


と微笑んだ啓太を、
俺は思わず抱き寄せてしまっていた。

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