キョウダイ
第19章 悠ちゃんの生活
柊斗side
葵の後ろ姿を見て、確信した。
海斗と一緒に明の姿を追って、木立の影から見ていた。
「やっぱり葵ちゃんは明の事が……!」
「うるせえ……」
不愉快そうな海斗の顔、睨むように葵の後ろ姿を見ている。
「だって見ただろ?葵ちゃんはひょっとして……!」
「そんなワケねえよ、冗談じゃない、お前のほうがまだましだ」
「だよねえって……ちょっと、海斗……!」
つかつかと葵に近付いて、その手を掴む海斗。
びくり、震える体。
「……行くぞ」
「海斗……どうして?」
海斗に腕を引っ張られて、振り返る葵の瞳には、涙が浮かんでいた。
それを見て、胸が痛んだ。
じっと出来なくなって、俺も葵の傍に行く。
「柊ちゃん……」
気まずそうな葵の表情。
それから、ぽつりぽつりと話してくれた。
何があったのか。
どうして急に、悠ちゃんの所に行ったのか。
「ごめんね、あたしは、どうすれば良かったのかな?明は家に来て欲しいみたいな事言ったかと思えば、まるで、二度と会えないような、言い方するし、もう、訳がわからないよ」
ベンチの上で、3人で座って、葵の話を聞いた。
聞いたけど。
符に落ちない。
「悠ちゃんを、選んだのに、何でさっきから、明の事ばかり言ってるの?」
「それはっ、だって、明が訳の分からない事を、言うからっ」
「うるせえ、もう、いい……。
行くぞ」
海斗がまた、葵の腕を引いて、学校へと連れて行こうとする。
もう、完全に遅刻だ。
それでもいい。
葵の口から、他の男の話を聞きたくない。
俺達は黙って学校へと向かった。