キョウダイ
第19章 悠ちゃんの生活
海斗と柊斗と別れて、自分の教室に向かう。
とっくにホームルームが始まってる様子だけど、静まり返ってる教室に後ろから、そっと入る。
後ろの隅っこの席だから良かった。
何とか、誤魔化せるかな?
音をたてずに、こっそり自分の席に座って、息をつく。
斜め前にいる真理ちゃんが、あたしに気付いて振り返る。
小さく手を振ったのに、プイとそっぽを向かれてしまった。
一瞬目が合った時の、真理ちゃんの視線が、やけに鋭くて、嫌な予感がした。
あたしのケータイにラインがはいった。
音は消していたけど、バイブで気付く。
制服のスカートに入れていたケータイを、そっと開いた。
『悠ちゃんから、一方的に話は聞いたけど、どういうこと?』
真理ちゃんだった。
あたしから、背中を向けたまま、ぴりっとした雰囲気を感じて、息を飲む。
『ごめんね、色々あって、後で話をしよう?』
『海ちゃんや、柊ちゃんや、明だけでなく、今度は悠ちゃんなの?
あたし、言ったよね?』
『ごめん、真理ちゃん、後で話を聞いて欲しい……』
『屋上で休み時間に話しよう』
『分かった』
ケータイを、スカートに入れて、真理ちゃんの背中を見つめる。
真理ちゃんがあたしの方を振り返る事は、一度もなかった。