キョウダイ
第19章 悠ちゃんの生活
ぐったりして、荒い呼吸を繰り返す、明の体を背中に抱えて、引き摺るようにして、タクシーまで連れて行く。
長身で細みだけど、かなり重たい。
身長が低いあたしにはつらくて、何度も転びそうになりながら、少しずつ歩く。
背中から伝わる明の体温が、熱い。
こんな状態なのに、来てくれた……。
背中から伝わる明の心臓の音。
何故だか、急に悔しくなって、涙が零れた。
なんで、いつも、いつも、明ばっかり……!
子供の時から、体が弱くて、少し無茶してあたしと遊んだだけで、熱を出して寝込む状態になって、明の両親に注意されたこともあった。
体育はいつも一人で、見学。
体調がいいからと、体育の授業に参加して、結局その後は保健室のお世話になったりして。
明だって、みんなと一緒に、体を動かしたいんだって、分かっていた。
だけど、それは、叶わなくて。
せっかく、手術して、良くなったんだと、思っていたのに。
明にはもう、未来がないって言うの?
何もかも、諦めなきゃ、いけないの?
せっかく、自分の気持ちに、気付いたのに。
悠ちゃんの元に戻るように、明は言うけど、そんな事、出来ないよ。
少し離れた場所に、タクシーが停まっているのが見えた。
あたし達の姿に気付いて、車を寄せてくれる。
何とかして、明の体をタクシーに乗せて、運転手さんに明に渡されたメモを見せる。
「少し距離があるけど、大丈夫ですかね?」
大丈夫じゃなきゃ、困るよ。
「明……、病院に行く?」
不安になって、明の体を揺らしてみる。
「薬……飲んで、少し休めば、大丈夫だから……、いつものことだよ……」
少し開いた瞳は、何も映してなくて、ますます不安になる。
タクシーが動きだす。
あたしは不安な気持ちを消すように、明の体をぎゅっと抱きしめた。
周防家の別荘は山の高台にあった。
大きな洋式の家に明を抱えてはいった。
ベッドルームらしき、雰囲気の部屋に入り、明の体を横たわらせる。
明の荷物があって、先にここに来たんだと気付いた。