キョウダイ
第19章 悠ちゃんの生活
「明はもっともっと意地悪で、我が儘じゃんっ、何を格好つけてっ、我慢してっ、意地悪じゃない明なんて、おかしいよっ」
後ろから抱きついて、ぎゅっと力を込めた。
「あたしの事だけは、我慢なんかしないでよっ」
明の背中に回してた腕が、ぎゅっと掴まれた。
「そうだね……。
今だけなら、我慢しなくてもいいかな?」
あたしの両手が明に掴まれて、体がフワリと浮いてくるりと回る。
体が回って、明の目の前に立たされた。
「本当は……、いつだって、昔から、俺は君を無茶苦茶に抱きしめて、汚してやりたいと思っていた。
思うがままに、酷く汚して、そうして、君に消えない傷痕をつけて傷付けばいいとさえ、思っていたのに……」
ぎゅっとを抱きしめられた。
「子供の頃、俺の本当の両親は、ひょっとしたら、君の両親なんじゃないかって、思った事があってね、自分の両親よりも、優しくて、居心地が良かったから、都合のいい夢を見た、実際はそんな訳なかったけどね」
背中を優しく撫でられる。
「あの事故の夢を俺は見たんだ。
車の中で君が気持ち悪いって言って、君の両親が窓を開けて、よそ見していた君のパパが、ガードレールを乗り越えて……。
君が見た同じ夢を俺は見たんだ」
びっくりして、顔を上げる、明の瞳が艶やかに瞬く。
「すぐに日本に帰って、ジャングルジムで遊んでる、君の姿を見て……憎いって思ったよ。
全て忘れて、新しい家族に囲まれて……俺の事も忘れて……虐め抜いてやるって、思っていたのに」
「意地悪してたじゃん」
拗ねた顔をして明を睨む。
「忘れられない存在になりたかったのかも、しれないな。
どんな嫌な奴でもいい、君を傷付けても、忘れられないようにしたかったのかもしれない」
「忘れる訳ないよ、それだけの事、されたしっ」
ぎゅっと抱きしめる、力を込めた。
痛いかも知れないって、気付いて、顔を上げて、明にキスをした。
「………………たくない」
唇を離して、明の顔が、さっと陰る。
「……………本当は、死にたくない」
ポツリと呟く、低い、低い声に、涙が零れた。