キョウダイ
第20章 残酷な意地悪
あたし達は時間が許せる限り、ベッドで過ごした。
明と色んな話をする。
海外で手術をしたけど20歳までは生きられないと、医者に申告されていたらしい。
何もせずに、ただ通院を繰り返せば、20歳までは生きられた。
だけど、明の精神が耐えられなかった。
悪い友達と一緒につるんで、悪い遊びを覚えた。
街に繰り出して、喧嘩やもめ事を繰り返す日々もあって、両親にも迷惑をかけた時代もあったらしい。
「葵の事も、悪い友達に拐って貰って、犯してやろうかと思った事もあったんだ……」
だけど、出来なかった。
葵には酷い事、出来なかった。
だけど、他の人には、迷惑をかけた。
「だから、バチがあたって、20歳まで生きられた筈の、寿命が縮んだんだと思うよ」
また、手術をする、体力はもう残ってない。
いつ死ぬのか、分からない。
そんな爆弾を抱えて、怯えるだけの日々。
「一緒に帰るけど、君はやっぱり悠ちゃんの所に行くべきだ」
「まだ、そんな事を言うの?」
あたし達はお互い譲らない会話を続けた。
それは帰りの新幹線の中でも続いていた。
だけど。
やっぱり無理が続いたのか、明の顔色は悪くなるばかりで、新幹線を下りてから、支えて歩く程になっていた。
タクシーに乗って、明の家に向かう。
荒い息をつく明を家の人にお願いして、あたしも明の傍に行こうとして、誰かに、腕を掴まれた。
強い力で引かれて、驚いて、振り返る。
「明と一緒の九州は……どうだった?」
固い表情の悠ちゃんが、そこにいた。
「……悠ちゃん……!」
「何があったのか、バカな女が家に来て、騒いでくれたおかげで、だいたい分かるよ。
バカな女のせいで、俺もすぐに九州までは行かれなかった、ごめんね、葵」
悠ちゃんの表情が恐い。
ゾクリとするほど、無表情で、冷たい笑顔……。
「でも、まさか、死にそうな明が行くとは思わなかったな?
そこまでして、好きだったとはね?」
悠ちゃんの声が冷たく、固い。
「お前もまさか、自分の気持ちに気付いたの?」