キョウダイ
第20章 残酷な意地悪
「本当にそう思っている?だったら、目を覚まして、実際に見て来たらいい」
すうっと、奏の姿が消えてなくなる。
無意識に手を伸ばしてしまう。
その俺の手を、誰かが、掴んだ。
「………おい、明っ」
「葵ちゃんはどこ?ここにもいないのか?」
聞き覚えのある声。
ハッとして、目を開けると、海斗と柊斗が何故だか、俺の部屋にいて、俺の顔を見下ろしていた。
ゆっくりと体を起こす。
「葵と一緒にいたんじゃないのか?」
海斗が俺の肩を掴んだ。
「悠ちゃんだって、探していたのに、ここにもいないの?」
回りを見渡しながら、柊斗が俺の顔を覗き込む。
「……家までは一緒にいたんだ」
「じゃあ、いったいどこにっ……」
その時、俺のケータイの着信のバイブ音が鳴った。
新幹線の中で、電源はいれたけど、バイブにしたままだった。
着信の表示を見ると、
『藤森 悠斗』
「悠ちゃんじゃん」
柊斗が俺のケータイを見て呟いた。
電話にでると、ぷつりと音がした。
怪訝に思い、液晶画面を見ると、ムービー再生ボタンがあった。
首を傾げて、再生ボタンを押す。
海斗と柊斗も、ケータイを見つめる。
そこには……………。
悲鳴をあげて、悶えながら泣いている、葵の裸の姿が写しだされていた。
同じように裸の悠ちゃんが、激しく葵のあそこに腰を揺らす姿が映しだされている。
心臓が鷲掴みにされたような、衝撃にうめき声をあげて、呼吸を繰り返す。
『…………けて………助けて……明……』
白いシーツが葵の足を拘束しているのが見えた。
「どういうことだ‼」
「何で悠ちゃんがこんなことっ!」
青ざめて叫ぶ二人。
俺は弾かれたようにベッドから下りた。
体に力が入らずに、しゃがみ込んでしまう。
いうことのきかない体を、心底恨んだ。
立ち上がる力もないのか………!
好きな女、一人、助けに行く事も出来ないのか…………!