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キョウダイ

第20章 残酷な意地悪






柊斗side




あの明が俺達に頭を下げるなんて……。




葵ちゃんの為に変わったのか、葵ちゃんが明を変えたのか。




自分の体だって、まともに動けないのに、そこまでして、嫌いな筈の俺達に頭を下げる。




あんな体だ、葵を助ける事なんか、出来やしないだろうと、思えた。




それでも。




タクシーを呼んで、明の体を担ぐ海斗と一緒に、タクシーに乗り込む。




悠ちゃんはあんなムービーを撮って、明を呼んでどうするつもりなのか。





嫉妬に狂ってるだけなのか。





そこには悠ちゃん特有の、冷静な判断力はないのか?




ただの復讐なのか?





タクシーは悠ちゃんの住むアパートに到着した。





タクシーの中でも、明の顔色は酷く、蒼白い。





呼吸は荒く、時折ひきつるようなひゅっという声がする。






……………こいつ、急に死なないよね?





不吉な不安がよぎる。





だけど、葵が助けを求めた人間は、明なんだ。





悠ちゃんに体を言い様に弄ばれて、体を拘束されて、うわ言のように呟いた言葉は、明に助けを求めていた。




『………けて……助けて……明……』





あの声が耳から離れなくて、思わずぎゅっと目を閉じた。





どうして、明なの、葵ちゃん。





嫉妬に狂った悠ちゃんの気持ちが、分かる気がした。





だからって、こんな事、許されない。





アパートの階段を駆け上がる海斗について行く。





明の体を背中に背負っているのに、失速する事はない。




背中に背負われてる明の体には負担がありそうだけど、構わずに走っている。




海斗もそれだけ、余裕がない事が分かる。





こいつ、悠ちゃんを、殺さないよね。





不吉な不安がよぎる。





「……悠斗っ!!」





玄関の鍵が開いてたのか、勢い良く開けて、ズカズカと上がり込む。




アルコール、消毒のような臭いが鼻につく。





真っ直ぐにベッドルームに向かう。





「お願い……っ、もう、やめて……っ!ああっ……!!」





葵の悲鳴のような泣き声が聞こえて、それと共に、ベッドの軋む激しい音。




パンっ、パンっ、パンっ、





体がぶつかり合う音。

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