キョウダイ
第20章 残酷な意地悪
「…………!」
「…………っ!」
「悠ちゃん……!」
目の前の光景が信じられなかった。
ベッドの上でぐったりとした様子の葵。
ベッドサイドにあるのは、何かの薬品なのか、たった今使った様子で蓋は転がっている。
華奢で小柄な葵の裸体は、手足が拘束されて、その体の上に後ろから組み敷いて、悠ちゃんがなおも、腰を打ちつけている。
激しく乱れているシーツは、体液で汚れていた。
「やめろ……悠ちゃん、やめるんだっ……」
やっとの思いで口にして、ベッドに近付く。
すうっと顔色が変わる海斗。
「……なんだ。
お前らも、来たのか?
招待したのは、明なのにな?」
一瞬だけ動きが止まり、振り返る悠ちゃんの表情に、鳥肌がたった。
髪も乱れて、興奮したような表情、目だけがぎらぎら鋭く光る。
うめき声を洩らす明が、海斗から離れて、ふらりと、悠ちゃんに近付いた。
「…………殺す………………殺してやる……。
お前なら、任せられると思ったのに…………!」
明のどこに、こんな力が残っていたのか。
悠ちゃんの体を葵から引き離して、空気を斬るような、鋭い回し蹴りを放った。
悠ちゃんの長身な体が吹っ飛び、壁に激しくぶつかる。
ゆらりと立ち上がる、明の瞳が、悠ちゃんを鋭く見据える。
目だけで、殺せるような、憎しみの込もった目付きに戦慄する。
壁に激しくぶつかり、床に倒れた、悠ちゃんの体の上に馬乗りになって、殴りつける。
「殺してやるよ…………!」
バキッ、バキッ!
頬を殴る鈍い音と一緒に、悠ちゃんの顔から血が流れて飛び散る。
「やめろ、明っ、もういいっ!」
壁に激しくぶつかり、頭を打ちつけてしまったのか、悠ちゃんの体は動かない。
俺は慌てて、明を止めて、海斗が明を悠ちゃんの体から引き離した。
ハア、ハア、ハア………。
明の荒い呼吸がやけに響いた。
ふらりと、ベッドにいる葵に近付く。
葵はぐったりとした様子で動かない。
それを、じっと見下ろす。
「見ないで……」