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キョウダイ

第1章 幼馴染み




「う、うん、そうなんだ」

誤魔化すように言ったあたしの一言。

視界の端で、明がにやりと笑ったような気がした。

んんっ?

「ふうん、まあ、そんなの関係ねえけど?」

海斗は呟きながら、いらいらと自分の髪をぐしゃぐしゃにした。

げげっ、機嫌悪い。

それから唐突にあたしの腕を引っ張った。

「ほら、家に入れ」

ふと子供のころを思い出した。





『葵は俺と遊ぶんだよっ』

あたしの腕を引っ張る海斗。

小学生くらいの時だろうか。

『だめだよっ、俺と約束してたんだよっ』

反対の腕を引っ張る明。

『いいから来いよ、葵っ』

『だめだったらっ』

『痛い、いたいっ』

両側から腕を引っ張られ、泣き出したあたし。

困ったようにおろおろする二人。

『みんなでっ遊んだらいいのにっ!』

泣きながら訴えるけど、絶対駄目って三人で遊ぶ事はなかった。

いやいや何度か遊んだ事もあったけど、すぐに喧嘩になるんだよね。

それだけ仲が悪い。

相性最悪。




ぐいぐい腕を引っ張られ、引きずるように家に連れて行かれるあたしに。

「また、明日ね。葵ちゃん」

にっこり笑って手を振る明。

いらっとした。

あんたのせいで。

もうっ。



「痛いってば、海斗っ?ちょっともう、いいじゃんっ」

引きずられるように、乱暴に引っ張られて行くあたし。

海斗?

靴を脱いで、リビングを突っ切って、なぜかあたしの部屋に向かう。

家は母子家庭で家事全般、あたしとお母さんがやるので、リビング、台所の近くにいわゆる女子の部屋がある。

いろいろ便利だからだ。

お母さんはアパレル系のファッションビルの経営者で社長さんだ。

だから。

家は広い。

しかもおしゃれな造り。

別れたお父さんは建築家だったしね。

五年前に別れてからお父さんが建て替えてくれた。

ちゃっかりなお母さん。

しかも美人だ。

キョウダイみんなお母さん似だし。

でも、あたしだけ似てないんだ。

お父さんにもそんなに似てないし。

色素の薄い髪と瞳が羨ましく思う事があった。



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