キョウダイ
第4章 大人の男の人
「似合うねえ!」
やっぱり胸元が強調されてるし。
「君の為の服みたいだね?背が低いのに、スタイルいいねぇ、なんか運動してるの?」
「空手部かな?」
さぼりがちだけど。
「ああそれで、引き締まってるんだ、エロいね?香住さんのデザインって基本的にエロ可愛いけどね?」
こてで髪を緩く巻かれる。
悠ちゃんはじっとあたしを見つめてるけど、なんか考えこんでる様子だ。
「まっ、こんな感じかな?ああ、俺、如月 一樹、悠ちゃんの同級生なんだ、よろしく。葵ちゃんならいつでもいいから電話してね」
名刺を渡される。
「ありがとう」
「一樹、車とって来るから」
「はいはーい」
靴や、ネックレスまで借りてしまったけど、どうやらお母さんの会社の商品らしい。
あたしの姿を見て、一樹さんが満足そうに頷く。
「こんな可愛いキョウダイがいると、彼女なんかつくろうとも思わないだろうね?」
あたしの巻いた髪を指でくるくる絡ませている。
「でも一緒に住んでないし、忙しそうだし」
悠ちゃんの事だろうと思って話を合わす。
「忙しそう?」
くすっと、一樹さんが笑う。
「案外、やばいと思って家を出たのかもよ?襲わないように……葵ちゃん?」
くるくると髪を指で巻いて、するりとあたしの頬に手を添える。
「男はみんな狼だからね?気をつけないと。キミみたいな魅力的な子は特にね」
「悠ちゃんはそんなっ」
「あいつ、むっつりだからね?」
「はあ?」
くすくすっと楽しそうに笑ってるし。
グレーのカラコンのせいか、何を考えているのか、分かんない人だ。
キラキラ目が光る。
ネコの目みたい。
表情もくるくる変わる。
あたしの髪を見るときは鋭く、話をすると人懐こそうにニコニコ笑う。
悠ちゃんの同級生で家に遊びに来たこともあるらしい。
あたしと会った事もあるみたいだけど、はて?
「じゃあ、行こうか?」
車を店の前に止めて、悠ちゃんがあたしの手を繋ぐ。
「またね、葵ちゃん」
ひらひらと手を振り見送られる。
頭を下げて笑顔でお礼を言った。