キョウダイ
第6章 戦いの火蓋 2
「もうっ、信じらんないっ、海斗の馬鹿っ、みんな起きちゃうでしょっ?」
真っ赤になって、慌ただしく身だしなみを整える葵。
「悪い……」
俺は片手でもなんとか出来た。
その怪我じゃなにもできないだろ?
昨日悠ちゃんが言ってたセリフを思いだす。
……できる。
だけど、どうしようもない、罪悪感。
最低な抱きかただという自覚もある。
なんだか落ち着かない。
イラつくのはなんでだ?
焦り。
不安。
いろんな感情が俺を支配していた。
「早く準備しなきゃっ」
てきぱき部屋を片づけ準備している。
「海斗は?忘れものない?」
「ねえよ」
「じゃあ、柊ちゃん起こさないとっ」
いつものように寝起きの悪い弟を起こしに行こうとする。
ちょっと待て。
俺ははっとして、葵の腕を掴む。
「俺が起こしに行ってやる」
キョトンとした顔。
「えっ?珍しいっ、やっさしいねえっ」
ぱあっと、うれしそうな笑顔。
くそ、可愛いいな。
「じゃあ、お願いしよっかなあっ、ご飯準備して待ってるね?」
るんるんと部屋を出ていく葵。
柊斗。
お前どんだけめんどくせえ弟なんだよ。