キョウダイ
第7章 学校でのキョウダイ
あくびの涙が目に溜まり、それを見て笑ってたら、明が隣に来た。
あたしの耳元で小声で囁く。
「俺と付き合ってくれなきゃ、君達が本当のキョウダイじゃないって、学校のみんなにばらすよ?」
……えっ。
なに、それ……。
どういう意味?
明の顔を見つめる。
いたずらっ子みたいな人の悪い笑顔を浮かべてる。
「やだなぁ、俺は産まれた時からあの家に住んでるんだからね?知ってるに決まってるよね?それに、昨日あの後、何かあった?」
耳元で低い声で囁く。
「別に何もないっ……!」
あたしの顔をじっと見つめ、ぎらりと明の瞳が光る。
「ごめんね、俺葵ちゃんの事は見たらすぐにわかっちゃうんだ。分かりやすいからね、君は本当に。……二人の雰囲気とかもね。君の目も、昨日とは明らかに違う」
びっくりして明の顔を見つめる。
何を考えてるのか分からない。
「そんなことっ……!」
「だからね?なおさら、君は俺と付き合わなきゃいけない。分かった?」
意地悪だ。
そう、昔から意地悪だった。
その癖、あたしが泣いたらオロオロするような、嫌な性格。
だから何でも、遠慮なくずけずけ言い合える。
今更、色っぽい雰囲気になんて、なるはずない。
気づけばあたしは小声で言っていた。
「ふりだけでもいいんでしょ?」
「そうそう、分かってくれた?」
「でも、ふりってなにすんの?」
「ん―、一緒に学校に行ったり、一緒に帰ったり、昼休みも一緒に食べたり?」
それって、今までと変わらなくない?
お昼は一緒じゃなかったけど。
彼女がいた時は一緒に帰ったりもしなかったけどね。
「でも、そんな事したら、彼女が出来なくなるんじゃないの?」
素朴な疑問。
「その時は言うから大丈夫」
にっこり笑う笑顔に警戒心はなくなってしまっていた。
まぁ、いいか。
昨日言ってた事も気になったけど。
あたしの事が好きとか、鈍いとか。
まぁ、いいか。
簡単に決めてしまっていた。
今までと変わらないと、思っていたんだ。