テキストサイズ

キョウダイ

第8章 意地悪な彼氏





頭が割れるように痛い。



冷や汗が流れる。



ふいに。



ふわりとした感覚。



明に抱き上げられる。



「……明?」



優しくベッドの上に下ろされる。




「少し横になってて、ああ、もちろん何もしないからね?」




ふわりとした布団を掛けられる。




「でも、勉強が……」




「今なんか、馬鹿なこと言った?」




きらりと明の瞳が光る。




「いや、別に?」




そっぽを向いてごまかす。




くすりという笑う気配。




「おやすみ」




ちゅっと頬にキスされる。




「もうっ」




布団をかぶり、赤くなった顔を隠した。




そういえば。



寝不足だったな。




頭が痛い……。




「明……、ありがとう」




呟いてから、目を閉じた。







意識が落ちて行く。





身体も一緒に沈むような感覚。







気が付けば。




あたしは、車の中にいた。



前の助手席にはママ。



運転席にはパパ。



後ろの後部座席にあたしは座っている。



カーブの多い山道。



気分が悪くなってシートベルトを外す。



「パパ〜葵気持ち悪い〜」



「それは困ったねぇ」



パパとママが窓を全開にする。



「奏ちゃんは気持ち悪くない?」



こちらを振り返るパパに、




「パパっ、前見て、前っ……!」



ママが焦ったように呟いた。



あたしは奏ちゃんと手を繋いでいた。



奏ちゃんは、しっかりシートベルトをしていた。






「葵ちゃんっ……!」



あたしを見つめる顔が凍りつく。



繰り返す、シーン。



大きな瞳が更に大きくなる。





奏ちゃんは気持ち悪くない?




シートベルトを外していたら?




あたしがシートベルトを外さなかったら?




気持ち悪いってあたしが言わなかったら?




「葵ちゃんっ……!」



何度も繰り返すシーン。



奏ちゃんの大きな瞳があたしを、追い詰める。




葵ちゃんどうして?




大きな瞳が語りかける。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ