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キョウダイ

第10章 彼氏になれない






でも。




何がいけないの?




あたしは柊ちゃんが好き。




海斗のした事に比べたら。




悪い事なんかない。






「あたしっ、柊ちゃんの事が好きだから……!だから、もう、変なことしないでっ」




「知らねえよ」




右手であたしの腕を引っ張る。




力が強いからそのまま、海斗のそばに向かう。



慌てて足を止めたのに、




片手で抱きしめられる。




ふわりと優しく抱きしめられる。




背中を優しく撫でている……。




大事そうに。




何度も……。





「海斗……?」





あたしは。





変に身構えてた。




それなのに、優しい手付きで背中を撫でられる。





やがて、ぽつりとした呟きが聞こえた。





「お前が誰を好きでも、俺がお前を好きなのをいまさらやめられねえ……、ムカつくけどな」




ぼそりと言ってから、




とんっ、突き飛ばされる。




よろめきながら、振り返る。




そのまま、離れて行く広い背中を、見つめていた。





海斗side





「彼女を迎えに行ってくるから、お兄さん」




じゃあね。




試験が終わるなり、明がわざわざ俺の席に報告しに来た。





「勝手にしろよ」




憮然として答える。




「あれ?いいの?てっきりついてくるかと思ったのに」



面白くなさそうに肩をすくめて、手を振り、2年の校舎のほうに行く背中を横目に見ながら。




俺は荷物をまとめて立ち上がる。




頭を冷やしたい。



もう3年だし。



明日も試験だし、勉強しなくちゃいけない。



だけど家に帰れば。




俺はまた葵を抱くかもしれない。





いや抱くな。





そんな気がする。




たとえ葵が嫌がろうとも。




嫌がられると、ますます欲しくなる。




あの顔を見ると理性が効かなくなる。




本当は泣かせたくない。




守ってあげたかったのに。




嫌われるような事ばかりしてしまう。




このままじゃ駄目だ。




自己嫌悪に陥る。

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