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キョウダイ

第10章 彼氏になれない

明side





「勉強はかどってる?明。まさか3年になって2組になるとは思わなかったわぁ、あんまり恥をかかせないでね?」



母親がコーヒーを持って部屋に入って来た。



パソコンのキーボードをたたきながら、コーヒーを受け取る。



「大丈夫に決まってるよ。3年になる前は体調が良くなかったからね?最近体調いいから」



だから。



早く部屋を出てってくれるかな?



目で訴える。



「じゃあ、頑張ってね」



そそくさと出ていく。



俺はため息をつき、ベッドの上に腰をかけた。




さっきまで葵が寝ていた。




『奏ちゃん……ごめなさい……』




泣きながら、確かに言っていた……。




「奏……」




俺はシーツをぎゅっと握りしめた。




本棚の開き戸を開けて本に挟んだ1枚の写真を取り出す。



目が大きな小学生くらいの男の子、その隣に似た顔立ちの大人びた男の子、年があまり変わらないように見える。



仲良さそうに肩を組んでいる。



二人とも首にお揃いのデジタルカメラを下げている。



友達だった。



俺の唯一の理解者。



誰もあいつの事を言わない。



あいつの事を忘れてる。



ごめんなさいと言う、葵の言葉が耳に残る。



俺だけは忘れないでいてあげるから。




もう少し待ってて。



葵side




また何事もなかったように、一日がはじまる。




今日は憂鬱な雨。



洗濯物は干せないから、乾燥までして畳んで片付ける。



昨日は勉強が出来た。



しかも柊ちゃんが教えてくれた。



1年なのに、教科書を読んだだけで、理解出来たみたい。



昔から頭が良かったけど。



しかも教えかたがうまい。



どっかの自称彼氏とは大違い。



だから今日は大丈夫。



機嫌良く朝食の用意をして、身仕度を整えた。




朝ご飯を食べ終わる頃に、




ピンポーン



家のインターホンが鳴る。




たぶん、明だ。




昨日より少し早い時間だ。




「はいはーい」




言いながら、ドアを開けた。





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