キョウダイ
第11章 皮肉な約束
結局皆で明を支えつつ家に送る事になった。
「うわあ、久し振り〜」
真理ちゃんが吼えるドーベルマンを睨みつける。
「俺も……」
海斗にはなぜだか吼えないドーベルマン。
庭がやたらと広いし、噴水があるし、公園みたい。
ちょっとした洋館みたいなつくり。
やたらと事務的なメイドさんの応対で明の部屋に案内してもらう。
広いベッドに明を横にして、メイドさんがテキパキと世話をしている。
体温計で熱を測ったり、着替えたり。
その間あたし達は手持ちぶさた。
真理ちゃんが続き部屋に案内してくれた。
「この部屋に入った事ある?」
「ないと思う?」
首を傾げてみる。
何度も明の部屋に行ったけど、入口の反対側にドアがあった。
たぶん、行った事はない。
「明の好きなものを集めてる。分かりやすい部屋よ?」
意味ありげに笑う真理ちゃんの案内でその部屋に足を踏み入れた。
部屋に入った瞬間、目に飛び込む写真。
それはまるで絵画の美術館。
色彩溢れる写真が1枚の絵画のように、額縁の中に収まっていた。
吸い寄せられるように、一番手前の写真を見る。
大きな瞳の男の子、その隣に寄り添っているのはあたしだ。
似た顔立ち。
『葵、5歳、奏、4歳。沖縄』
プレートにそう書いてあった。
青い空、青い海。
空と海の境界線が分からない。
太陽の光に照らされて、眩しい色を放つ海。
二人とも眩しい笑顔で笑ってる。
その隣にも少し離れた間隔で、綺麗な星空の下に、似た顔立ちの三人の子供が笑ってる。
『葵、5歳。奏、4歳。明、6歳。』
どれも皆、あたしと奏。
1枚だけ小さな写真があった。
あたしと奏、明、あたしのパパとママ、明のパパとママ。
何度か会ったことがある明のパパとあたしの本当のパパの顔が似ていることに気付く。
似ている……?
視界の隅にメイドさんがいるのが目に入った。
写真を指差して思わず聞いてみる。