キョウダイ
第11章 皮肉な約束
悠ちゃんが駆け付けて来た。
『葵っ、大丈夫かい?』
ジャングルジムのてっぺんで、こちらを見下ろしている、その瞳が責めてるように光る。
『明……っ!帰って来たのか……?』
『せっかく帰って来ても、意味なかった。頭をうってないね?』
『お前っ……!』
『大丈夫っ!葵なんともないよ?』
『へえ?以外と頑丈なんだね?』
『明っ……!』
悠ちゃんの怒った姿をはじめて見た。
それからだ。
いつも必ず遊びに行く時は悠ちゃんがついて来ていた。
明を警戒してたんだ。
だけど、明……。
ベッドに横になっている明の傍に近付く。
額にかかる黒い髪をかきあげる。
「いままで、ごめんなさい」
大事な約束を、ずっと忘れていた。
そして。
奏ちゃんを死なせてしまった。
あの事故はあたしのせいだ。
「あたしは明の部屋で漫画読みたいから、またね?」
真理ちゃんに手を振って、海斗に支えてもらって家に帰った。
ズキン、ズキン。
頭痛と共に流れてくる、記憶の欠片。
自分の部屋に入って、ベッドの上で頭を抱える。
海斗も黙ってついてくる。
「大丈夫か?」
心配そうにあたしの顔をのぞきこみ、不安気な薄茶の瞳が揺れている。
「あたし、今まで明になんて事を……あんな約束して……奏ちゃんを死なせたのに……」
「死なせた?」
ぴくりと海斗の眉がつり上がる。
「あたしのせいで、みんな死んじゃった。あの時に気分が悪いって言ったからっ……!」
「なに言ってんだ?あれは事故だろ?」
海斗が怒ったような顔をしている。
「あたしのせいなのっ、だからパパが振り返ったからっ、奏ちゃんだってシートベルトをあたしが外していたらっ」
「黙れよ!」
あたしの唇を強引に塞ぐように、海斗にキスされた。
ぼすん、そのまま、ベッドに押し倒される。
「自分のせいとか言うな、あれは事故だったんだ」
頭の中がぐちゃぐちゃだった。
記憶の混乱。
忘れていた、記憶の欠片があたしの頭の中に流れこんでくる。