キョウダイ
第12章 悪い子
雨音が部屋の窓をたたいている。
時間の感覚がわかんない。
今が昼なのか、夜なのか。
ベッドの上でぐったりしてた。
目を開けると海斗の顔が真上にあった。
綺麗な顔立ち。
薄茶の瞳をじっと見つめる。
首筋にキスされる。
ちゅっ、と音をたてる。
くすぐったい。
思わず首をすくめるけど、今度はちくんという痛み。
んっ?
吸血鬼みたいにあたしの首筋を吸っている。
「いたいっ」
文句を言うと、柔らかく微笑む。
こんな顔ができるんだ……。
思わず見とれていると、今度は胸の近くにちゅっ、とキスされる。
敏感になってるあたしの体。
ゾクゾクする。
また、チクリとする。
乳首がたってる。
「ひゃっ……!」
耳元にもキスされる。
ちゅっ、という音が大きく聞こえる。
ぎゅっ。
片手で優しく抱きしめられる。
「離れたくねぇな、愛してる……」
耳元で掠れたような声。
ぼそりと小声で囁く。
ドキン。
あたしの胸の鼓動が急に早くなる。
ドキンドキン。
苦しいくらいに早鐘をうってる。
目頭が熱くなった。
「どうした?何か思い出したか?」
心配そうに眉をひそめてる綺麗な顔立ちが、涙のせいでぼんやりして見えなくなる。
「忘れてしまえ、お前にとってつらい記憶なら、無理に思いだす必要ない」
甘く囁かれる。
違うっ。
そうじゃないっ。
あたしが泣いてるのは……。
……どうして?
自分が分からない。
海斗の腕の中。
幸せだと思った。
ずっとこうしていたいとも……。
嬉しくって。
愛しくて。
苦しくって。
胸が締め付けられる。
このぬくもりから離れたくないと思ったんだ。
それなのに。
柊斗の顔が浮かぶ。
柊ちゃん……。
あたしの大事な……。
大事な弟……。
『たった一人の弟なんだから、大事に仲良くしなきゃ』
あれは、誰の言葉?