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夏恋

第1章 夏恋

 そうこうしているうちに花火が打ちあがった。

「もうこんな時間!?」

「そうだな。どっか腰かけるか?」

「うん」

 私達は人の多い河原の僅かに開いているスペースに腰かけた。

 花火が上がる。ハート型の花火。緑に青にピンクなど色とりどりで次から次へと花が咲く。咲いては散って、咲いては散って……。それはまるで恋のようで。込み上げてくるものを感じて、俯いてしまった。

 その時、ふわりと頭の上に感じた温かさ。隣を見ると、花火を見ながら私の頭を撫でる川口くん。鉢合わせた時から何も言わないでいてくれるのが有難くて、胸がいっぱいになった。


「おねーちゃん、泣いてるの?」

「泣いてないよ」

 心配する男の子を見て、慌てて涙を拭いて、笑う。

「泣き虫」

「うるさい」

 思わず口を吐いた言葉。川口くんは、ぷっと吹き出した。

「何で笑うのよ!?」

「いや、椎名もそういうこと言うんだなって」

「そういうこともあるの」

「そうだよな!」

 花火はフィナーレに入っている。金色の花火が下からいくつもの線になり、駆け上った。竜が天に昇っているようで、希望の光を感じる。

 花火の打ち上げを知らせる合図と共に立ち上がり、帰っていく人たち。

「私達も帰る?」

「そうだな」

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