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セツナ桜

第1章 セツナ桜

「ついたよ」

 俊哉の言葉に私は車を降りる。そこは、薄汚れた小さなアパートだ。大学に入ってから一人暮らしを始めたとメールで言っていた。

 俊哉は車の鍵をかけると、少し錆びた階段を上る。私は後ろを着いていく。

「ここだよ。どうぞ」

 部屋は一つでキッチンとトイレとお風呂付き。一人なら十分な生活ができる家だ。綺麗に整理整頓されている。

「こたつで座っといて。コーヒーでいいよね?」

「あ、うん。ありがとう」

 そう言われて、私はこたつに入る。

「ちょっと小腹空かない?」

「そうだね。今日は朝食べてないしね」

「だめだよ、朝は食べなきゃ」

「うん」

 少しして、お盆にコーヒー二つとパンにハムとチーズを挟んだだけのサンドイッチを乗せて、持って来る。俊哉はこたつの向かい側に座る。

「どうぞ」

「ありがとう」

 私は、サンドを口に運ぶ。一人暮らしで結構マメになったんだ。

「おいしいっ」

「よかった」

 俊哉は微笑むと私にキスをした。私は慌てて目を閉じる。唇が離れて、目を開けると満足そうな俊哉がいた。

「ごちそうさま」

 食べ終わると、卒業アルバムを見返し、高校時代の他愛もない話に盛り上がった。

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