心はまるで水車のように
第7章 パピヨン
「あらあら。まあ、いいじゃありませんか。今日はパパに子犬買ってもらうんだってはりきっていたんですから」
パパ? あなた? 頭の整理が追いつかない。確か彼女はいないって、一人暮らしだって言っていたはず。なのにどうして……?
「あぁ、そうだな」
「あら? ところでこの子は?」
「なんばで絡まれてるとこを助けたのがきっかけで仲良くなったんだよ。美羽ちゃんっていうんだ」
「そう。ほんと、あなたって優しいのね。でも、そのうち刺されたりしないでよね」
私そっちのけで話は進んでいく。だけど、だんだん頭の整理はついていく。この男の子は、優祐さんの息子で、女の人は妻で……。つまり私は、今まで騙されていたってことなのか。遊ばれていたってことなのか。親切な振りして本当は……。
「あ、私、これから塾があるので、失礼します。いい子犬見つかるといいですね!」
「あぁ、ありがとう」
私は逃げるように立ち去った。平常心は保てただろうか。変じゃなかっただろうか。傘を差すのも忘れて夢中で外を歩いた。頬から零れ落ちるものは、雨と混ざり合う。まるでドラマのヒロインのようだ。そんなことを考えて声を出して、笑ってみたりもした。