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心はまるで水車のように

第12章 心はまるで水車のように

「分かった。実はね……」

 私は、お母さんの再婚のこと、喧嘩のこと、優佑さんのことを話した。

「そっか。美羽も頑張ったな」

 瞬は、私の頭を撫でる。

「でもさ、お母さんとはちゃんとは話した方がええで。お互いの誤解とか行き違いもあるやろうし……。それに、お母さん、本当に再婚するわけでも美羽に紹介するわけでもないってこと、美羽がちゃんと向き合って、話してくれるの待ってるんやで。もし、その後なんかあっても俺が受け止めてやる。だから、一歩前に進んでみろ! それと、もう出会いカフェとか売春とかはすんなや。もう一度言うけど、もっと自分のことを大切にしろや。俺は、美羽に何かあったら悲しいからさ」

 瞬が私のことをここまで考えてくれているなんて思わなかった。瞬の優しさに素直に甘えてみようと初めて思えた。どうして大切なものはすぐそばにあったのに気づけなかったのだろう。私はいくつ過ちを繰り返したのだろうか。でも、私は新しく生まれ変わりたい。やり直したい。

「分かった。私、今日帰ったらお母さんに話してみるよ。向き合ってみるよ。そしたら、瞬?」

「なんや?」

「これからも私の隣で微笑んでくれる?」

「もちろん」

 頭を撫でてくれる瞬の大きな手が心地よい。瞬の微笑みに安心する。一人じゃないんだ。私には大切なものがすぐそばにいつでもあった。

 いつの間にか二駅分ほど歩いていて、公園の隅には水車がくるくると回っている。その様子は、まるで変わりゆく私の心のようだった。




End

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