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心はまるで水車のように

第4章 優祐との出会い

「気をつけなよ」

 上から降りそそぐ声に今度は誰だと顔を上げれば、黒髪で短髪の眼鏡をかけた男性がいた。さっきの金髪の人のオシャレスーツと違い、この人はかっちりと着こなしていた。

「あ、ありがとうございます」

 私は、男性にお辞儀をして、その場を去ろうとする。

「ちょっと待って!」

 呼び止める声に後ろを振り向く。

「何ですか?」

「別に、何ってことはないけど、こんな時間にどうしたのかなって」

 男性は、腕時計を見て、言う。私は、時計を持っていないので、首を傾げる。

「こんな時間?」

「十一時五十五分。もうすぐ最終電車来るよ? 家、帰らなくていいのかい?」

 男性は私に時計を見せる。あぁ、もうこんな時間だったのか。そりゃ変な人も沸くわけだ。

「いいのよ。あんな家、帰る気しないから。もう、ほっといてよ。あなたには関係ないでしょ!」

 一気に言うと、私は走る。と同時に男性も走った。駅とは反対方向に行くが追いかけてくる。

 少しして、周りを見渡すと、赤や青のドレスを着た頭もメイクも盛っているお姉さんたち。頭の薄くなってしまった残念なスーツのおじさん。先ほど絡まれたような金髪でスーツのお兄さんなどがいた。看板には、クラブとかスナックとか書いてある。これは……。額に冷や汗が伝い、私は立ち止まった。

「だから、言わんこっちゃない。この辺は、一歩横道それたらこういう風俗街なんだから」

 後ろには先ほどの男性がまだついて来ていた。

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