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『さちこ』

第1章 島谷病院

「看護婦さん、今日は私これで帰りますね…」

佐知子が席を立つ。

「ご苦労様です。気をつけてお帰りください」

血圧を計り終えた久保田は一旦手を止めて佐知子を見送り、体温計を取り出した。

祥子の脇に体温計を挟みながら祥子に話しかける。

「部屋入る直前にちょっとだけ聞こえたんですけど、今出てるお薬、苦手なんですか?」

「…薬が得意なやつなんかあまりおらんじゃろ…」

「錠剤か、カプセルか、粉かだったらどれが一番飲みやすいです?」

「……」

祥子はブスッとした表情のまま何も答えない。

「注射と飲み薬だったらどちらがいいですか?」

「…液体の飲み薬っちゅーのは無いんか?」

ようやく祥子が口を開いた。

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