『さちこ』
第2章 時の魔女
「お前はいつも、過去を後悔したり、未来を心配したりそればかりだ。今を生きろ。それがルールだ」
「…それはおかしいじゃろ。今を生きろ、というのがルールなのに、29歳の時の過去にワシを戻してやるだなんて、罠の臭いしかせん。若返りなどいらん。ワシは55歳の今を生きる」
「…寝たきりの体で?」
「ただの骨折じゃ。すぐに治る。治ったら退院して人生を楽しむ!美味しいものも食べるし、旅行も行く!好きなこともやりたい…」
「不平と不満しかない人生を生きてきたお前に好きなことなんてあるのか?」
「それは…これから見つける。“六十の手習い”というやつじゃ!」
「…ちっ。もう少しで命がいただけたのに」
魔女サチコが舌打ちをする。
「なにっ…?」
「“今を生きろ”というルールを破ったら命をいただく、とさっき言ったろう。29歳という過去に戻ることを望んだ時点でお前の命をいただく予定だった。だが、お前は今を生きると誓った。お前の勝ちだ。しっかり今を生きろ」
「……。」
祥子は無言でサチコを見つめている。その瞳は力強く輝いていた。
「…それはおかしいじゃろ。今を生きろ、というのがルールなのに、29歳の時の過去にワシを戻してやるだなんて、罠の臭いしかせん。若返りなどいらん。ワシは55歳の今を生きる」
「…寝たきりの体で?」
「ただの骨折じゃ。すぐに治る。治ったら退院して人生を楽しむ!美味しいものも食べるし、旅行も行く!好きなこともやりたい…」
「不平と不満しかない人生を生きてきたお前に好きなことなんてあるのか?」
「それは…これから見つける。“六十の手習い”というやつじゃ!」
「…ちっ。もう少しで命がいただけたのに」
魔女サチコが舌打ちをする。
「なにっ…?」
「“今を生きろ”というルールを破ったら命をいただく、とさっき言ったろう。29歳という過去に戻ることを望んだ時点でお前の命をいただく予定だった。だが、お前は今を生きると誓った。お前の勝ちだ。しっかり今を生きろ」
「……。」
祥子は無言でサチコを見つめている。その瞳は力強く輝いていた。