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『さちこ』

第2章 時の魔女

「…いい瞳だ。その瞳に免じて、これまでの55年間、今を生きてこなかったことは水に流してやる。ついでにお前に一つ良いことを教えてやろう。鏡の魔法だ」

「鏡の魔法?」

「うむ。望みを叶える魔法じゃ。29歳は無理だが若返りも出来るぞ?」

「若返りを望んだら命をとるんじゃないのか?」

「若返りを望んだら、じゃない。今を生きることを放棄したら、だ。そもそも、お前は老けすぎじゃ。本来の55歳はな、もっとずっと若い」

「…老けすぎてて悪かったな」

老けすぎ、と言われて不機嫌になる祥子。

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