しなやかな美獣たち
第1章 ♠:Vivid Colors 【学園・NL】
ほんのり染まっている頬に、僕は先輩が動揺している事を確信し、ほくそ笑む。
「ちょっ!何、ニヤニヤしてんのよ」
「別にニヤニヤしてませんよ?」
そう言うと僕は、視線を宿題に戻した。
すると前の席で”カタン”と椅子がなり、先輩が立ち上がった。
向かい側から机の周りを回ってツカツカと僕の傍まで来ると、先輩は机に片手を付いた。
僕は怒らせたのかと、内心ビクビクしながら、先輩の方を見上げる。
その瞬間。
柔らかくて温かい物が唇に触れた。
視界の片隅で揺れるダークブラウン。
僕は瞬きを繰り返す。
目の奥ではチカチカと鮮やかな色が躍る。
僕が驚きに固まっていると、ゆっくりと先輩の顔が離れていった。
今の…。
キス…?
僕は指先で唇を抑える。
頭でそれを理解した瞬間。
ぼんやりと滲んでいた僕の世界がクッキリとした色を持つ。
僕は立ち上がると、自分の席に戻ろうとする先輩の腕を掴んだ。
僕はそのまま、彼女の手を引きながら、人気のない書棚の方へと歩いていく。
先輩は僕の剣幕に、茫然として大人しく僕に引かれるまま付いて来た。
僕は先輩と過ごす様になってから、結構、人気のない場所を調べていた。
いつか先輩と秘密の行為をする時の為に。
僕は完全に死角となる場所まで来ると、彼女の背を書棚に押し付け、腕の中に閉じ込める。
「先輩がいけないんですよ?」
そう言うと僕は紅く色付く彼女の唇を塞いだ。