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しなやかな美獣たち

第3章 ♥:Sweet Beast【恋愛・NL】


 「あ! キミ!! ひょっとして……。これを探してる?」

 男性の声に呼び止められ振り向くと、優しそうな微笑みを浮かべて、私のスマートフォンを掲げているイケメンさんが居た。

 彼は確かクラスで一番のイケメンさん。大手の商社に勤めているサラリーマンだと、自己紹介で言っていたっけ。

 大学を卒業し、仕事を覚えて余裕の出来た私は、週に3回の作家養成講座に通っていた。彼はそのクラスメイトである。

 「えっと……、はい! それを探してました!!」

 私は彼に近付くと、スマートフォンを受け取る為に手を差し出す。

 「駄ァ目! 先に言う事があるでしょう?」

 彼はそう言うと、スマートフォンを私の手の届かない高さまで掲げた。

 「え?」

 直ぐに返して貰えると思っていた私は、彼の行動に呆気に取られてしまい固まってしまった。

 目の前の彼は悪戯っ子のように目を輝かせて意地の悪い笑みを口元に浮かべ、私を見下ろしている。

 綺麗な顔。

 意地悪な笑みを浮かべた整った唇に、筋の通ったスッとした鼻。形の良い眉毛に、涼し気な目は長い睫毛に縁取られて黒目がち。

 数秒、時間が止まったかのように動けなくて、見惚れてしまった。

 「ねぇ? キミのスマホを保護してあげてたんだよ? 何か言うことがあるでしょう?」

 「え……。えっと、御礼に食事にでも……」

 私が目の前に迫る、彼の綺麗な顔に動揺しながらそう言った途端、彼は盛大に吹き出した。

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