しなやかな美獣たち
第3章 ♥:Sweet Beast【恋愛・NL】
「嫌いなものとかある?」
車のハンドルを握りながら、彼が私に尋ねる。狭い車の中、イケメンと二人きりの状況に緊張している私は、ただ勢いよく首を横に振る事しか出来ない。
「そっか。それならここでいいかな?」
そう言うと彼はハンドルを切り、駐車場へと車を滑らせた。
「着いたよ」
彼はシートベルトを外しながら、私に笑いかける。
ううっ!! 暗い筈なのに笑顔が眩しいですっ!!
私がドキドキしながら、シートベルトを外している間に、彼は車を降りると私の座っている助手席側に回り、扉を開けてくれた。
「さぁ、降りて?」
そう言うと覗き込むように身を屈めた彼は、私に手を差し出す。
ちょっ!! この手を取っていいんですかぁー!? 大丈夫なの? 売り飛ばされたりしないよね?
そんな馬鹿な事を考えていると、彼は私の手を取り、スッと車から降ろしてくれた。
イケメンさんは何をやってもイケメンなんだ。全てをスマートにこなす彼に、半分うっとりな私。
名前も覚えていない彼に、既にこの時には魂の半分を持っていかれていた。
駐車場から少し歩いて入ったお店は大手チェーン店のシーフードレストラン。
そのお店の窓際の席に案内され、私達はそこに落ち着いた。横に視線を流せば、窓から見える夜景に思わずうっとりする私。
ファミリー向けのレストランとは言え、侮れないなと思う。