しなやかな美獣たち
第3章 ♥:Sweet Beast【恋愛・NL】
「お金を払って、自分で受けている講座なのにね。教えてくれた人に感謝の気持ちを現している人が少ない。その点、キミは毎回、どんな講義であっても、先生に感謝の気持ちを現している……」
川戸さんは言葉を切ると、私の手に彼の手を重ねて、「そんなキミが素敵だなって思ったんだ」と言って微笑んだ。
嗚呼、駄目……。
クラクラする。
彼のキラースマイルに、私の思考が揺れ出す。心臓はバクバクと煩いくらいに高鳴り、私はこのまま心臓発作を起こして死んでしまうのではないかと思う程だ。
「ねぇ? キミのスマホだけど、休憩時間にキミが席を立った時に、僕が隠したって言ったら怒る?」
「え?」
「今日、珍しく机の上にスマホを出しっ放しだったでしょ? 今ってスマホがないと不便な時代だから、これをモノ質にすれば、キミはきっと困って戻ってくるだろうなって」
そう言うと彼は悪戯っ子のように首を竦めて笑った。
今日は腕時計を忘れた為、スマートフォンで時間を確認していた。だから講義中も机の上に置きっ放しにしていたのだ。
しかし、講義が始まると講師の話に集中し、すっかりスマートフォンの存在を忘れてしまっていた。
「そういう一生懸命なところも好きなところかな。それから帰る時にきちんと自分の机を綺麗にしていくでしょ? そういうところも好きだな。皆の机の上は消しゴムの屑でいっぱいなのに……」
彼のその言葉に、もう完全にノックアウト。