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しなやかな美獣たち

第1章 ♠:Vivid Colors 【学園・NL】


この辺は、僕の町よりずっと都会で。

デパートもあるし、ライブハウスだってあった。

僕の従兄は軽音部に入っていて、先週のライブは、従兄の先輩が出演するからと言う理由でチケットを買わされたらしい。

邦楽に興味はなかったけれど、色々と世話になっている手前、断るのも気が引けるので付き合ったのだった。

そして僕は彼女に一目惚れをしたのだ。

彼女のバンドは『MAJESTIC(マジェスティック)』と言う名前のガールズバンドだった。

僕が恋をしたのは、ギターのユカさんって言う人。

たまたまあのバラードだけが、彼女の持ち歌なんだとか。

学生なのか社会人なのかは不明。

従兄に頼んで先輩に訊いて貰ったけど、彼女は音合わせの時にフラッと来て、音合わせが終わるとフラッといなくなり、楽屋には殆ど居ない。

そしてライブが終わるとさっさと帰ってしまい、打ち上げにも出ない、かなり謎な存在なんだそうだ。

だったらバンド仲間達に訊いてみてくれよと思ったが、彼女については『教えられない』んだそうだ。

つまるところ、良く分からないと言うワケで。

名前も本名じゃないかも知れないし。

でも、もし街中で彼女に出会ったら、僕は分かるんじゃないかと思っている。

あのオーラは隠しきれない筈だ。

そんな彼女が身近に居た事を知るまでにあと5分。

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