しなやかな美獣たち
第4章 ♥:オオカミ少年とヒツジ女子【年下♂×年上♀】
まだ、新米で怖い物知らずだった私は、体当たりでお坊ちゃまに接した。
悪い事をしたら叱り、良い事をしたら褒める。執事は唯、従う為にいるのではない。主の利益を最優先に考えねばならない。
だから、主の利益にならないと思う事は苦言であっても言わなければならない。勿論、機嫌を損ねないような言い回しで。
その甲斐があってなのか、一年を過ぎる頃には、信頼を寄せて頂けるようになっていた。
いや、信頼なのか?
それとも甘えなのか?
「おい! 楠! 早く背中を流せ!!」
私が坊ちゃまの制服をハンガーに掛け、整えていると浴室から呼ぶ声がする。もう、何も出来ない子供ではないのだから、入浴くらいは一人で済ませて欲しい。そう思い、溜息を吐く。
つい、この間までは子供のようだった身体の線も、日に日に逞しくなっている。そして、男性の象徴も。正直、目のやり場に困るのだ。
そろそろ、廊下で服を脱ぎ始めるのも止めて貰わねばなるまい。メイド達の苦笑いを思い出して、そう思った。
「坊ちゃま、そろそろご入浴は、お一人でなさいませんか?」
背中をスポンジで擦りながら、私がそう尋ねると、「何故だ?」と不思議そうな顔をする坊ちゃま。
私は自立心がどーのこーのと尤もらしい御託を並べてみるが、「嫌だ」の一言で一蹴された。