しなやかな美獣たち
第4章 ♥:オオカミ少年とヒツジ女子【年下♂×年上♀】
そして胸の辺りを撫でながら、私の首筋に舌を這わせた。いつの間にこんな事を覚えたのかと、私は吃驚して固まる。
「……って言うか、何故お前は"サラシ"なんかを巻いている!?」
私の胸の辺りを弄(まさぐ)っていた坊ちゃまが、声に怒りを滲ませてそう言った。
「え……。学校にお迎えに上がる時に少しでも男らしく見えるようにと思いまして……」
「そんな、要らん事をするなっ! 俺は女でありながら、立派に執事を務めているお前を自慢したいんだ!」
「自慢……、ですか……?」
「そうだ。お前のこの柔らかい髪も、ふっくらとしたこの唇も……。優しい瞳も……。全部、女である、俺の自慢の執事のものだ。それなのに……」
私を後ろからギュッと抱き締める坊ちゃまの腕は逞しくて……。
私はその腕から逃れる事が出来ない。
私は女である事にコンプレックスを持っていたのだろうか。自分で望んで入った世界であると言うのに。
心の中に澱(おり)のように沈殿していたコンプレックスは、坊ちゃまの一言で、跡形もなく消え去った。
「お前はお前のままでいい。お前のままがいい」と、坊ちゃまは私の耳元で囁きながら、私のシャツを脱がせにかかる。水分を含んで肌に貼り付いてしまったから、苦戦しているようだが。