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しなやかな美獣たち

第5章 ♥:最後のキスは死神と【ファンタジー・NL】


 「いや、そんな気はねーけど? 俺、普通は人に見えないし。唯、リストに載ってるなら、あんたをあの世に送ってやろうかと思って……」

 男は手に持っている、タブレット端末を動かしながらそう言った。

 「リスト?」

 「そ。死神のリスト。俺、死神だから」

 この男……。中二病を拗(こじ)らせた系か? 大体、「死神」って言ったら、黒いマントに骸骨顔、そして大きな鎌を持ってるモンじゃないの!? なのに、この男が持っているのは、タブレット端末だ。

 「それは人間が勝手に決めたイメージだろ? って言うか、あんたの名前は?」

 「朱音(アカネ)だけど?」

 「フルネームで言えよ」

 「霧島 朱音(キリシマ アカネ)よ。これでいいでしょ? 早く出て行ってくれない?」

 「霧島朱音ね」と男はあたしの名前を復唱すると、タブレット端末を操る。そして、「あんた今日自殺しても、死なないよ?」と言った。どう言う事かと尋ねると、この後、借金取りが来て、死にかけたあたしを病院に連れていき、一命をとりとめる事になっているんだとか。そして、そのまま風俗でこき使われる事になると男は言った。

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