しなやかな美獣たち
第5章 ♥:最後のキスは死神と【ファンタジー・NL】
「え、何それ。生き地獄ってヤツじゃん」
「そうか? セックスが好きなら、天国じゃね?」
「好きならね。生憎、あたしはそんなに好きじゃなから」
「そうなんだ? 結構、いい身体してんのになぁ?」
そう言うと男は突然、あたしの胸を揉み始めた。男の不意打ちの行動に、固まる事数秒。そして我に返ったあたしは、男に包丁を突き付けた。
「どさくさに紛れて、何してんのよ? って言うか、何なの?」
「だから、死神だって言ってるじゃん。俺はあんたの男の命を刈りに来たんだけどさ……。本人が居ないんじゃ、しょーがねぇな……」
「じゃあ、あたしの命を持ってけば?」
どうせあたしは死ぬ気だったのだ。隼人の代わりに連れていけばいい。そう言うと、自称死神は「俺は予定にないヤツの命は刈らない」と言った。
「とは言え、あんた、このままここに居れば、間違いなく風俗に売られるぞ? どうする?」
「どうするも何も……」
そう言うとあたしは俯いた。どうすればいいんだろう。ここで自殺を図っても、死ねないのであれば決行する意味がない。しかも、待っているのが、生き地獄だ。