しなやかな美獣たち
第1章 ♠:Vivid Colors 【学園・NL】
ああ…。
僕って馬鹿だ。
折角、彼女と話せるチャンスだったのに。
でも、彼女が同じ学校内に居る事が分かったのだ。
これはきっと僕と彼女は出会う運命だったんだ。
そう勝手に思い込む。
それからの僕は校内をウロチョロしては彼女の痕跡を探した。
しかし、中々彼女は見つからない。
1週間が経っても彼女の手掛かりは掴めなかった。
従兄に尋ねても、知らないと言われた。
彼女は幻だったのだろうか。
逢いたいと想う気持ちが見せた白昼夢だったのか。
ライブハウスに行けば何か分かるかもと思ったが、今月の出演者リストを見ても、彼女達のバンドの名前はなかった。
八方塞がり状態だった。
そんなある日、僕は体育の授業中に怪我をして保健室に運ばれる事になった。
サッカーの最中に、ゴールポストに激突し、脳震盪を起こしたのである。
気が付けばベッドの上。
幸い、皮膚が割れる事はなかった。
後で先生には石頭と笑われた。
そんな事は置いておいて…。
今は何時なのだろうかと、時計を確認しようと起き上がる。
ズキンと頭が痛む。
「…つぅ…」
僕は頭を抱えて、ベッドの上で蹲った。
僕の声が聞こえたのだろうか。
ベッドの周りを囲むカーテンが、”シャー”っと音を立てて開いた。
「気が付いた?」
その声に、僕の心臓はバクンと跳ねた。
彼女だ!!!!!!