しなやかな美獣たち
第1章 ♠:Vivid Colors 【学園・NL】
「今、先生居ないんだよね~」
彼女はそう言うと、ベッドの脇に置いてある椅子に座った。
これはチャンスだ。
ずっと探していた彼女が目の前にいる。
「あのっ、キミは?」
僕は勇気を出してそう言った。
すると彼女は眉間に皺を寄せ僕を上から見下ろした。
「ああん?一年坊が三年に向かって”キミ”だとぉ?」
えっ!?
「せっ…先輩でしたか。すみませんっ。あの…先輩は、ここで何を?」
「何をしてよーが、アンタには関係ないでしょーが」
それはそうなんだけど。
「食べ物の恨みは根深いのだよ?少年!」
先輩は腕を組んで、僕を上から見ながらそう言った。
「え?」
「この前、最後の1個の焼きそばパン、アタシから奪ったでしょーが!」
ジロリと睨まれ、僕は蛇に睨まれた蛙状態だ。
「そんなっ!濡れ衣ですっ。あれは僕が先に見つけて…」
僕が焦ってそう言うと、彼女はプッと吹き出した。
「冗談だよ。パン1個でそんなに恨む理由ないじゃん」
「ソ…ソウデスカ…」
「ゴメンね、脅かして」
そう言うと彼女はケタケタと笑った。
ユカさんは、想像していたよりも気さくな人みたいだ。
それよりも、僕を覚えていてくれた事の方が衝撃だった。
ひょっとしたら、イケるかも!?
そこで僕はライブハウスで見たユカさんの事を話してみる事にした。