しなやかな美獣たち
第5章 ♥:最後のキスは死神と【ファンタジー・NL】
「いい子にして待ってろ」と言われたけれど、何をして待っていればいいと言うのだろう。ここには、パソコンも無ければスマホもない。ゲーム機もなければテレビもない。本すらもない。外に出ようと思って玄関を探したけれど、それらしい物はなかった。窓はあるけど開かなかった。まあ、外に出た所で、変な空間に飛ばされないとも限らないから、出ない方がいいんだろうけど。
仕方が無いので、城の中でも探検するかと思ったけれど、そう言えば玄関を探しに部屋を出た時に、暗くて長い廊下がずーっと続いているだけで、他の部屋の扉を見かけなかった事を思い出した。結局、何もする事がなくて、ベッドに転がる。
あたし、これからどうなるんだろう? 死神の城へ連れて来られたけれど、あたしって死んだのかな? でも、リストにない者の命は奪えないって言っていたし。
「あー!! もう、よく分からん!!」
あたしは大声でそう言うと、ふかふかのベッドの上でゴロゴロと転がった。死神の「仕事」って魂を刈る事だよね。隼人の魂を刈りに来たって事は、隼人は今日、死ぬ事になっているんだ。そう思ったら、涙が零れた。捨てられたのに。借金を背負わされたのに。唯、利用されて捨てられたのに。それでも、未だ、あたしは隼人を愛していた。